【明光義塾】県立高校入試特別講座 第四回(社会)

高校受験生の皆さん、こんにちは。すでに私立高校の受験を経験した人も多いと思いますが、実際の入試の雰囲気はいかがでしたか? 自分の苦手な分野や入試で気をつけるべきことなど、気がついたことを本番に生かしてほしいと思います。今日は県立入試の「社会」についてお話をしましょう。

 今年度の入試から、社会と理科の学力検査時間が5分延長されて、5教科全てが各50分ずつとなりました。昨年度は、大問7で出題されていた「三分野の総合問題」がなくなり、代わりに「公民」の大問が1つ増えました。つまり、地理・歴史・公民の3分野から大問が2つずつとなり、大問数6、小問数46問が出題されました。問題数だけで考えますと、大問1つを約8分半、小問1つを1分あまりのペースで解くことになります。

 去年の問題数の約85%が「1問1答形式の問題」で、39問77点分でした。内訳は、「選択問題」が24問、「当てはまる語を書く問題」が14問、「並べ替え問題」が1問。残りの約15%が「記述形式の問題」で、7問23点分でした。一昨年まで大問1で出題されていた「一問一答式小問集合題」がなくなりましたが、出題形式別の割合は従来とほとんど変わっていません。各大問で、「1問1答形式の問題」がやはり大きな割合を占めていますので、従来通り基本的な知識の暗記が重要です。大問の中でどのような形で出題されても答えられるように、語句の意味や関係を理解し、漢字表記も含めて覚えましょう。

 一方で、1問の配点が高く差がつきやすいのが、配点の約4分の1近くを占める「記述形式の問題」です。去年出題された記述問題の正答率は最高でも30%を切っており、10%あまりが2問、10%未満が3問でしたので、かなり難問ぞろいだったといえます。例えば、大問1日本地理の小問5(2)では、「都市の中心部で、集中豪雨の際に大規模な水害が発生することがある理由を、『舗装』の語を用いて書く。」という問題。模範解答は「地面がコンクリートやアスファルトで舗装されていることが多く、降った雨がしみこみにくい(ので)」です。ニュースでもよく取り上げられる身近な問題のため、学校で特に学習していなくても普段の生活から答えが思い浮かぶと思われますが、正答率は12.1%と低く、答えられない受検生が多かったようです。単なる暗記に終始せず、自分が生きている現実の社会の勉強だ、という意識と興味を持って取り組んでほしいと思います。

 大問3・4は歴史問題。大問3小問5(2)1では、「古墳の分布図と鉄剣の資料の説明をふまえて、大和政権の勢力範囲が3世紀から5世紀にかけてどのように変化したと考えられるか。」という記述問題が出ました。これは2つの分布図から読み取れる変化をそのまま書いて、大和政権の勢力が拡大したことを書けば良いだけなのですが、正答率は5.8%。記述問題を多く解き慣れる必要性を痛感する問題です。大問4小問1(3)は、さらに正答率が低く3.3%。提示資料や文が分かりやすいヒントとなっている設問でしたが、重要語を知っているだけでは記述できない問題でした。「歴史」では、時代の背景や流れを問う問題が多く出題されます。ただ単に語句を覚えるのではなく、出来事の因果関係や流れを確認しながら勉強することがとても大切です。

 大問5・6は公民。大問5小問5(3)で出題された記述問題は、正答率が7.9%。図から読み取って「地方自治に関して国と比較した地方の行政事務の特徴を書く」と、「政令都市と比較した小都市の歳入の特徴を地方交付税の役割に触れて書く」という問題でした。図の情報が読み取れたとしても、地方自治の知識がないと適切な語を選んで表現することが難しい問題でした。「公民」も「地理」と同様に、自分に関係する身近な問題として理解しながら勉強する必要があります。

 「記述形式の問題」に対しては、苦手意識を持っている人が多いと思いますが、部分点がつく場合もありますので、無解答のままにせず、分かる範囲で書くようにしましょう。対策としては、問題を解いたら丸付けをし、自分の解答と模範解答をよく見比べてから模範解答を写すという方法が効果的です。

 最近の入試問題は、図や表などの資料、会話文や発表原稿など様々な形式を用いて出題され、「提示された資料から読み取れること」と「知識」を組み合わせて答える形となっています。また、時事が反映されやすく、普段からテレビなどで注目しておくことも大切です。例えば、SDGs(持続可能な開発目標)関連では、フェアトレードやマイクロプラスチック、温室効果ガスなどの環境問題、また、パリ協定やダイバーシティ(多様性)などの用語もチェックしておきましょう。