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足利剣友会の代表を務める山口ヨシ子さん(76)。
その剣道人生の始まりは、現在同道場の指導者でもある息子・真良さんが幼稚園の年長だった頃にさかのぼる。
当時、小さな真良さんは言葉に難しさを抱えていた。少しでも改善すればと願い、剣道を習わせたところ、日々の鍛錬を通じて成長する姿が見られた。
その姿を目の当たりにした山口さんは、自身も剣道の道を志すことを決意。35歳にして剣道を始め、足利剣友会に通い始めた。
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その後、平成元年11月に創設者である湯沢東先生が逝去。
突然の出来事に道場が揺れる中、保護者たちの支えもあり、山口さんは湯沢先生の遺志を受け継ぐ形で、同年12月に代表に就任した。
当時、剣道界で女性の代表は少なく、数々の苦労があった。「周りに認めてほしい、そして自信を持ちたい」という思いを胸に、当時三段だった段位は七段まで取得。努力を重ね、女性指導者としての道を切り拓いてきた。
現在でも女性の代表者は少なく、その存在は貴重だ。
山口さんのリーダーシップのもと、足利剣友会の門下生は着実に増加。平成12年1月には、稽古場所を足利市立第三中学校の格技場に移転し、より多くの子どもたちが剣道に親しめる環境を整えた。
また、剣道教育への貢献が認められ、令和6年12月には「少年剣道教育奨励賞」を受賞。これは平成20年度(当時58歳)に続く2度目の受賞となる。
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受賞に際し、山口さんは「2度目の受賞は本当にうれしいです。道場の生徒、保護者、家族、先生方の支えがあったからこそ、ここまで続けてこられました。『継続は力なり』という言葉を胸に、今後も健康に気をつけながら、正しい剣道を伝えていきたい」と喜びを語った。
剣道を通じて子どもたちの成長を見守るだけでなく、保護者とも喜びを分かち合える場を築いてきた。足利剣友会の発展と地域の剣道教育に尽力し、今なおその熱意は衰えることがない。