【RESPECT】足利の味を支える「旬鮮和食 仁や」店主・島野仁さん 料理人の道、迷いと決意の先に。

「うちに来たら、まずは親父ギャグを味わってください(笑)」

そう話すのは、足利市の日本料理店「旬鮮和食 仁や」店主・島野仁(ひとし)さん。
開業から22年。地元の人々に親しまれる店には、料理に込めた確かな情熱と、島野さんの温かな人柄がにじむ。

-人生の転機は、高校3年の夏-

地元足利で食堂を営んでいた両親。「小さいころから料理が身近にありました」と島野さん。
しかし当時の夢は意外にも「気象関係」の仕事に就くことだった。

大学進学を目指し、予備校の夏期講習にも通っていた高校3年の7月。
進路を決めるその時期に、心の中で“料理人”というもう一つの道が芽生えた。

「いま考えても、なぜ料理を選んだのか自分でも不思議です。でも、やっぱり両親の姿を見ていた影響が大きかったんだと思います」

-料理人を目指し専門学校へ そして、修行の日々-

調理師免許を取得するため、前橋の群馬調理師専門学校へ進学。
1年間、料理の基礎から実践までを徹底的に学んだ。

卒業後は恩師の紹介で東京の日本料理店に就職し、そこから12年間で10店舗を渡り歩いた。

「朝早くから夜は終電。修行は厳しかった。ですが、その分、たくさんのお客様や料理人の方と出会えたことが財産です」と振り返る。

一流の味と技に触れる日々の中で、地元に戻ったらた「地元足利のみなさんにおいしい料理を届けたい」という思いが強くなったという。

-地元足利で「仁や」をオープン-

33歳のとき、実家の店を継ぐために足利へ帰郷。しかし、駐車場などの問題があり、新たに店舗兼住宅を建てる決断をした。

開店当初は、家族3、4人で切り盛りすれば何とかなると思っていたが、現実は甘くなかった。
ランチ営業も重なり、睡眠時間はわずか。
「あのときは肉体的にも精神的にも本当にきつかったですね」

ー22年目のいま、変わらぬ思いー

「おかげさまで、10月で創業22年を迎えることができました。お客様の声に応えながら、無駄を省き、少しずつ自分らしい形を築いてきました。これからも、その積み重ねを大切にしていきたいと思います」と静かに、しかし芯のある声で語った。

ーぜひ、味わって欲しい一品ー

おすすめは、やはり「刺身の盛り合わせ」。
新鮮な魚を種類ごとに手書きで説明し、食材への思いを伝える。

「どんな魚を食べたのかをしっかり味わってもらいたい。そのひと皿が心に残ること、それが料理人としての何よりの喜びです」

そして最後に、いつもの笑顔でこう締めくくった。
「『刺身の盛り合わせ』もいいですが、うちに来たら、まずは私の親父ギャグを味わってください(笑)」

所在地:栃木県足利市弥生町59−3
電 話:0284-42-1571
営業時間:PM5時~PM11時30分(最終入店PM10時、ラストオーダーPM11時)
※年末は予約でにぎわうため、早めのご予約を